原因不明の失神を放置するとなぜ危険なのでしょうか。失神の原因が特定できない理由や、どのような検査方法があるのか、専門医に伺ってきました。
足立和正 先生
失神の原因は様々で、各種検査を受けても原因を特定できないことが多くあります。失神が起こる頻度が少ない場合は原因不明のまま放置されていることが少なくありません。原因不明のまま失神を繰り返すという状態は、計り知れないほどの不安と恐怖を伴うかと思います。
失神の原因が特定できない理由として、失神発作がいつ起こるかの予測が難しく、起こった瞬間に検査することが非常に難しいからです。逆に失神発作が起こったときの心電図がわかれば、心原性失神(心臓の異常が原因)か非心原性失神(てんかんなどの脳神経系が原因等)を判断する上で有益な情報となり、原因特定に大きく近づきます。
原因が心臓であるかどうか判断しておくことは非常に重要です。心原性失神の中には心臓突然死を引き起こす不整脈が原因になっていることがあり得るからです。
心原性失神は1分以内に意識が回復するため他の原因に比べ意識の回復が早く、健康に支障がない軽度なものだと誤解されやすいです。軽症に見える失神こそ気を付けて頂き、上記の症状にあてはまる場合は一度循環器内科を受診されることをお勧めします。
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)によると発作時の状態を把握する方法としてホルター心電図、体外式イベントレコーダー、植込み型ループレコーダーが挙げられています。ホルター心電図や体外式イベントレコーダーは非侵襲的であるというメリットから最初にこれらの検査を行うことが多いですが、これらの検査は心電図を記録できる期間が1~14日間程度と比較的限られています。数か月に一回程度の失神発作の場合、それらの検査では発作をとらえられないことが多いのです。その点、植込み型ループレコーダーは皮下に植え込むという条件はあるものの、3年間継続して失神が起こった際の心電図をモニタリングできます。
また近年、植込み型ループレコーダーを改良した植込み型心臓モニタ(ICM)という製品も出てきました。この製品の場合、胸の表面の適切な部位に1cm程度の切開を入れ、皮下に小さな心電計を植え込むことになります。頻脈や徐脈などの不整脈の心電図は自動的に記録保存されるため、失神した場合はその時の心電図を解析することにより、心原性かどうかを診断することができます。
さらに、ICMではICMで記録されたデータを自動的に病院の医師のもとに転送する遠隔モニタリングシステムを使用できます。我々はそのデータを解析して、危険性が高いと判断された場合は患者さんに直接連絡して対処するようにしています。前述したように心原性失神では命にかかわることがあり得るからです。我々の病院ではICM植込み後に10秒以上の心停止が記録されたため(下図参照)、患者さんに直接連絡して病院に予定日よりも早く来院してもらい、ペースメーカ治療を行った事例があります。
このような新しい検査が出てきたことにより失神の確定診断に至る可能性が高まってきました(2017年11月現在)。
それぞれの検査方法の特徴を理解し、主治医の先生に相談のうえ、ご自身に最適な検査方法を見つけてください。
これまで特定できなかった失神の原因がわかるかもしれません。あきらめずに原因を見つけていきましょう。